僕がシェフなら、みんなを笑顔にするような料理だけは作るまい
おいしいものをたくさん食べてきて
満たされ太ったグルメたちには無視されても
ただ、ひとりかふたりだけ
ほんとうの飢えを知っている人だけが
感激をもって頬張ってくれるような
そんな料理を作るだろう
僕が画家なら、みんなを笑顔にするような絵だけは描くまい
誰もがあっさり素通りする僕の絵の前で
ただ、ひとりかふたりだけ
得体の知れないなにかに惹かれて
思わず立ち尽くしてしまうような
そんな絵を描くだろう
僕が音楽家なら、みんなを笑顔にするような曲だけは奏でまい
まるで空気のようで
誰もその調べに気づかないけれど
ただ、ひとりかふたりだけ
ふと感じ、足を止め
じっとその空気に耳を澄ましてくれるような
そんな曲を奏でるだろう
ただ、ひとりかふたりだけ
はるか遠い記憶を思い出すかのように
僕がここにいることに気づいてくれれば
それでいい
