自慢

誰かの自慢話を聞いていて、「そんなこと自慢になるのかな。むしろ、それって恥ずかしいことなんじゃないかな」と、思うことがある。

たとえば、「私は、ハワイで、日本人観光客たちがこないすごくいいスポットを知っている」なんていう。

「そんないいところなら、みんなに教えてやれよ」と、僕なんかは当たり前に思うのだが、自分だけがいい思いをしているってことが、その人には自慢になるらしい。

実に貧困な精神だと思うけれど、きっと、僕のほうがヘンなんだろう。

自分のほうが友達よりも高価なカバンをもっていて、それが恥ずかしくて、ついこっそり隠してしまう。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の中に、たしかそんなようなくだりがあって、「あ~、この感じわかる!」と子供のころ読んでえらく共感したのを覚えている。僕も、小学生のころに、友達の誕生日会に呼ばれてもっていったプレゼントが、他の友達がもってきたものよりもちょっとだけ高価なものだったので、「ごめん、プレゼント忘れちゃった」と、もっているのに出せなかったことがある。うちは、どちらかというとお金のないほうの家庭だったから、逆にそういうことに敏感だったのかな。

やっぱり、僕のほうがヘンなんだろうなあ。

だいいち、こんなことを語っている僕自身が、オレは人間が出来ているだろう的な自慢をしているようで、これを読んでいる人は、逆に、「石井はこんなことを自慢気に書いて、恥ずかしくないのかな」と思っているのかもしれないし......。

ん~、ぐるぐる回ってしまうぞ。

でも、自分のほうがいいものをもっていたり、人よりも頭がよかったり、金稼いでいたり、社会的な地位が高かったりといった、そんなことよりも、人が喜んでくれるのがいちばん嬉しいことだって心から思っている人たちだって、僕の周りにはいっぱいいるのだ。

そして、そのことこそが、僕の自慢だぞ。

コンタクト

取材など、お仕事に関するご依頼は、以下のメールアドレスまで。

sales@sublimination.net

個人的なご相談などにはお応えしておりません。メールは担当者を通じて石井裕之に送られます。