若いころ、地元の中学校の夏休みの水泳教室の指導員をしていたころ、昼休みにはいつも、誰もいなくなったプールのへりに寝転がって、水面にきらきら太陽の光が反射しているようすをずっと眺めていました。
男子の部と女子の部が、午前と午後で切り替わる。その合間の夏休みのプールは、ほんとうに静かだったのです。
ときどき鳥が降りてきて、さっと水をすくって帰っていくと、水面が鋭く揺れて、光がきらきら躍る。風が吹いて水面をなでると、ゆったりとした優しい波が起こって、光はまた違ったリズムで躍りだす。
それが、僕の大好きな光景でした。あんな、誰にも邪魔されない静かで贅沢な時間は、もう手にはいらないのかな。
世の中は騒がしすぎる。無駄な言葉が多すぎる。どうでもいいような情報ばかりが、豊かな心を麻痺させていく。
いまでも、ふと、たとえば皇居のお堀なんかに反射する夕日を、ひとりで何十分間も黙って眺めていることがあります。
もしそんな僕を偶然に見かけたら、どうかそっとしておいてください。暇でそうしているわけでは、ないのだから。